観心寺 如意輪観音[大阪]

鮮やかかつ艶やかな秘仏の女王

【御開帳】4月17日・18日


仏像に興味を持った人が最初に知る「秘仏」の一つがこの観心寺の如意輪観音ではないでしょうか。仏像の入門書などにも大体写真が載っていて、彫刻離れした人肌のような艶かしい姿を観て「おぉ!」と思うと同時に、年にほんの2日間しか拝めないと知ってため息をつく…そんな経験をした人は少なくないと思います。私も例外ではありませんでした。

それ以来、いつかは拝観したいと思いつつもチャンスはなかなか巡ってきません。毎年御開帳がある4月になるとこの如意輪観音のことが頭に浮かんでは、今年もだめかと落胆し続けてきましたが、ついに今年(2014年)、他の拝観やイベントと絡めて、意を決して行ってまいりました!

観心寺 山門

観心寺 山門

観心寺がある河内長野というと、関東の者にとっては大阪のずっと南にある遠い場所というイメージでしたが、実際はそうでもなく、駅は南海と近鉄が乗り入れていますし、駅から観心寺方面へのバスも1時間に2~3本はあり、意外とあっさり来れたなぁという印象です。

バスを降り、太平記での活躍が知られる楠木正成の銅像を見つつ歩きながらも、ついにあの長年憧れた仏像に会えるんだという期待感でテンションがどんどん上がっていきます。そして山門到着。写真は帰りに撮ったものですが、御開帳開始直後に着いたので、参拝客もどんどん集まってきていて、御開帳特有の高揚感がさらに気持ちを煽ります。

観心寺金堂へ

観心寺金堂へ

奥に見える金堂を目指し、境内の石段を上ります。山門を入ってこの手前ぐらいまでは、年に一度の御開帳ということで食べ物などの出店も並び、賑やかな雰囲気です。

観心寺 金堂

観心寺 金堂

金堂です。すでに列ができ、続々と中に人が入っていきます。この辺まで来るとテンションもMAXです(笑)

そして、中へ。あぁ、あのお方が目に入ってしまいました! ここで心を落ち着けるべく、堂内全体の様子から内陣の様子へ、さらに須弥壇から厨子へと、改めて外側から少しずつ御本尊にフォーカスし直します。正直これはよくわからないプロセスですが、個人的にいつもそうしてます。なるべく周囲の環境や空気感含めて仏像を拝みたいという願望の現れに過ぎないのですが…

室町時代初期建立の金堂の内部は、国宝建築に相応しいさすがの趣きがあります。この環境で国宝の秘仏を拝む…とても贅沢かつ最高のシチュエーションです。内陣の重厚感も凄い。黒漆や長年の煤で黒々とした中に、柱絵と両サイドの板絵曼荼羅の極彩色が浮かび上がり、濃密な密教感を演出しています。

そして、須弥壇上には建築と一体化した重厚な三扉の厨子。中央はもちろん如意輪観音。左右の扉は閉ざされており、向かって右に不動明王、左に愛染明王が祀られているのだとか。ともに室町時代の作で、お寺で販売している図録に写真が載っていますが、特に不動明王は巧みで鋭い彫り口が力強さを感じさせ、なかなかカッコいい感じです。この二体含め三扉が同時に開くのは大法要の時だけだそうで、それが次はいつなのか、ちょっと調べてもわかりませんでしたが、生きているうちには観てみたいものです。さぞかし壮観なことでしょう。

須弥壇の上、厨子の前には四天王が横一列に並びます。こちらもひと目で一級の平安仏とわかる確かな造形です。

そして満を持して御本尊の如意輪観音に視線を集中させます。

如意輪観音菩薩坐像(お寺で販売している図録より)

如意輪観音菩薩坐像(お寺で販売している図録より)

最初は外陣のほぼ正面から拝しました。それなり離れてはいるものの、如意輪さんにはしっかり照明が当たっていますし、今まで写真で見ていたのと近い色彩で意外とよく見えたという印象です。

金堂内ではお坊さんが20分毎ぐらいで入れ替わって、お寺の創建以来の歴史や、この如意輪観音を刻んで本尊とし寺号を観心寺と定めたと伝えられる弘法大師のこと、国宝第5号で大阪で最初の国宝に指定されたこの如意輪観音のこと、また、御開帳はもとは33年に一度で、戦後今のように毎年行われるようになったこと、そして仏にどういう気持で向き合い拝んだらよいか…等々、非常に中身の濃い話をしてくださいます。

その中で、これほど御開帳に人が集まるようになったのは割りと最近のことで、十数年前までは東京からマニアがポツリポツリと来るだけだったというようなこともおっしゃってました。やはり近年の仏像ブーム、「見仏」ブームの影響はあるようですね。正直自分もその中の一人に違いありませんけど…。ただ、この日の拝観者層を見るに、必ずしも仏像マニアやファンだけでなく、案外地元や近隣から、お寺の行事もしくはお祭りとして楽しみに来た人も多いように見受けられました。もちろん熱心に観音様を信仰している人もたくさん来ています。また、この御開帳期間に同市内の金剛寺と観心寺を結ぶ無料シャトルバスを出すなど、PRに力を入れている河内長野市の努力もあってのことだと思います。

さて、自分が来てから1回目のお坊さんの話が終わり、必ずしも入れ替え制ではないけれど、これで外に出る人もいるので、さらに御本尊に近づくことができました。内陣に少し入った位置まで接近可能です。中にはここぞとばかり、双眼鏡でさらに細部を観ようとしている人もいます。自分もここはちょっと失礼して、改めて合掌礼拝の後、単眼鏡でより細かく表情などを拝見させていただきました。

アップで観ると、やはりこの物憂げだけれども艶っぽい表情にはドキッとします。生気が宿っていて、木で作ったものという感じは全くしません。赤い唇も立体感をともない、写真以上の実存感があります。頬に当てたり、様々な持物に触れる手や指先も、単に繊細だとかリアルだとかとは違う、平安初期の仏像特有の強さと存在感があり、神々しい雰囲気を発しています。

ちょっと引いて、また全体を眺めると、この像含めやはり平安初期の仏像の特色でもありますが、太めで張りがあるムチッとした腕、しかもそれが非常にバランスよく6本配置されているのは、ため息なしでは観られないものがあります。

結局なかなかその前を離れがたく、お坊さんのお話をトータル2回聞きながら如意輪さんを観ていました。

この御開帳の2日間は、御本尊の如意輪観音の他に、金堂で大随求菩薩画像、霊宝館で白鳳期の金銅仏2体と後村上天皇の念持仏である木彫厨子入愛染明王坐像も公開されます。

【写真】大随求菩薩画像(河内長野市「河内長野の歴史遺産」)

大随求菩薩画像はどんな罪でも消してくれるという霊験あらたかな鎌倉時代の仏画。この尊格が描かれたものは非常に珍しいとのこと。八臂で強い目力のその姿に見入られつつ、私も滅罪をガッツリと祈らせていただきました。

 

観心寺は境内が広く、見どころもたくさんあります。この日は天気もよく、とても気持ちよく過ごせました。

建掛塔

建掛塔

建掛塔に祀られる大日如来

建掛塔に祀られる大日如来

後村上天皇陵への参道

後村上天皇陵への参道

楠木正成が願主となり三重塔を建てようとしたが、湊川の戦いで戦死したため初層だけとなった建掛塔(たてかけのとう)、楠木正成の首塚、南朝の後醍醐天皇の皇子で、一時観心寺を行宮とした後村上天皇の御陵である桧尾陵など、太平記や中世史ファンにはたまらない遺構も数多くあります。

開山堂

開山堂

また、広い境内には、弘法大師を祀る御影堂、阿弥陀堂、役行者をまつる行者堂、開山堂、訶梨帝母を祀る鎮守堂など様々な信仰のお堂が点在しており、一つ一つ巡っていくと結構時間もかかります。

星塚巡り

星塚巡り

星塚

星塚

その中でも特に珍しいのは「星塚」でしょう。弘法大師が北斗七星を勧請し祀ったもので、如意輪観音を祀る金堂を7つの星塚が囲み、鎮守の訶梨帝母天と合せ、境内に「七星如意輪曼荼羅」を構成しているのだとか。星塚があるのはここ観心寺だけで、これを巡ると厄除開運のご利益があるそうです。

 

さて、4月の気持ちいい境内でただのんびりともしていられないのが観心寺の凄いところ。平安仏を中心とした仏像の宝庫である霊宝館も観ないといけません。

霊宝館

霊宝館

ここには、平安初期の非常に量感のある地蔵菩薩、本尊の如意輪観音の眷属である八大観音を構成した何体もの聖観音や十一面観音(うち2体は東博と奈良博に1体ずつ寄託中)、もとは建掛塔に祀られていた塔内四仏と呼ばれる4体の如来坐像、本尊の試作と伝えられ、おそらくは御前立だったであろうという如意輪観音、先述のこの御開帳中だけ公開の白鳳期の金銅仏2体と後村上天皇の念持仏である木彫厨子入愛染明王坐像…等々、数多くの仏像が展示され、ほとんどが重要文化財です。さすが、古代から続く関西の古寺はこれだから凄いと本当に感心してしまいました。

観心寺霊宝館 地蔵菩薩立像(山と渓谷社『山渓カラー名鑑 仏像』より)

観心寺霊宝館 地蔵菩薩立像(山と渓谷社『山渓カラー名鑑 仏像』より)

 

今回の記事はすっかり長くなってしまいましたが、それだけ観心寺は見どころが多く盛りだくさんだということですね。実際私もそれなりに時間を見込んでいたにも関わらず、楽しみにしていた境内の出店で食事をする時間は全くなくなってしまいました。と同時に、本尊の如意輪観音も一回拝めばいいというのではなく、何度でも拝みたくなる仏像だと思いましたし、観心寺の広々した境内も何度来てもいいだろなと思わせるものでした。

またいつか、できれば何度でも来たいお寺です。次回こそはもっと余裕を持って、食の楽しみも込みで(笑)

[拝観日:2014年4月17日]

 

檜尾山 観心寺

【住所】大阪府河内長野市寺元475

【電話】0721-62-2134

【拝観】本尊御開帳:毎年4/17・18の10:00~16:00(その他は9:00~17:00)/通常拝観時間:9:00~17:00

【拝観料】本尊御開帳日(4/17・18):特別拝観料700円/通常拝観料:大人300円・小中学生100円

【アクセス】南海高野線・近鉄長野線の河内長野駅から南海バス小深線「金剛山ロープウェイ前行」(11系統・8系統)「石見川行」(9系統)または小吹台団地線「小吹台行」(10系統)で約15分、「観心寺」バス停下車。

また、御開帳当日の4/17・18は、観心寺→金剛寺→河内長野駅を結ぶ無料シャトルバスが約30分間隔で運行。

【公式サイト】http://www.kanshinji.com/

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中