川崎大師(平間寺) 大開帳奉修[神奈川](後編)

「赤札」と「南無阿弥陀佛」の関係とは

【御開帳・赤札授与】10年に一度の春約1ヶ月間(期間・日程は年による。平成26年は5月1日~5月31日)


大本堂で御本尊の厄除弘法大師を拝んだ後は、渡り廊下で繋がる信徒会館へ。いよいよ赤札が授与されます。渡り廊下以降の館内には呪文のような低い声でお大師様の宝号「南無大師遍照金剛」が天井のスピーカーから流れていて、それはトイレでも聞こえるようになっていました。結局この日御開帳・赤札列を3巡もしたので、それから数日は頭の中で「南無大師遍照金剛」がループしていました(笑)

信徒会館の中で靴を履き、階段を降りて出口のところ(入口ロビー)で、赤札が僧侶の方々から一人一人に手渡しで授けられます。この日1巡目は、11時過ぎに並び始め12時40分頃に赤札をいただくことができました。

1巡目に授与された赤札

1巡目に授与された赤札

赤札は写真のとおり、小さな紙に「南無阿弥陀佛」の六字名号が赤い版で刷られています。そして、ここで「おや?」と思う人は多いはず。なぜ本尊厄除弘法大師の御開帳で「南無阿弥陀佛」なのか? それこそ「南無大師遍照金剛」ではないのか?と。

これは私が最初、この赤札授与という行事がピンとこなかった理由の一つでもあります。もともと私は仏像拝観を目的にお寺を巡っていたので、長いこと御朱印すらいただいてきませんでしたし、お札やお守りもたくさん持っていても祀る場所やしまう場所もないのであまり授からないようにしていました。今でこそようやく御朱印は楽しさがわかってきて時々いただくようになりましたが、でも基本的に仏像、つまり仏様のお姿を拝んでビビっときたりグッときた場合のみにしています。それなので、お大師様を拝んで阿弥陀様のお札をいただくというのが、自分的にはどうにも腑に落ちないでいました。

しかし、今回の大開帳の公式サイトや、お寺で配られている冊子の説明を読んで、ようやくなるほど!と思いました。まず、あまり阿弥陀様を祀っているイメージがない真言宗でも、無量の寿命を具える阿弥陀如来は息災延命の秘仏として尊ばれているというのです。そしてこの赤札の「南無阿弥陀佛」の六字名号は、弘法大師の直筆を版にしたものといわれています。

さらに、なぜ「赤」なのか。これは赤や朱が、災難を除き幸福を呼び込むめでたい色であることに加え、阿弥陀如来の体が紅頗梨色(ぐはりしき)と呼ばれる紅水晶色であることに由来するというのです。そこで、真言宗では紅頗梨色阿弥陀如来という宝冠阿弥陀如来の一種の尊像が確かに存在することを思い出しました。

紅頗梨色阿弥陀如来坐像(東京 安養院蔵。学研『東京近郊仏像めぐり』より)

紅頗梨色阿弥陀如来坐像(東京 安養院蔵。学研『東京近郊仏像めぐり』より)

写真は別のお寺のものです。体が赤く(絵画では紅頗梨色にするが、仏像ではむしろ珍しく、金色にする場合が多い)、宝冠をかぶる姿は大日如来によく似ていますが、胎蔵界大日如来のような法界定印ではなく指を曲げた阿弥陀定印になっています。また、天台宗でも常行堂の本尊として宝冠阿弥陀如来(こちらは金色で、衣装の着け方に多少違いがある)を祀り、金剛四菩薩を伴う五尊形式が原則といいます。そういえば、伊豆熱海の伊豆山神社の一角にある伊豆山郷土資料館には、神仏習合の時代の伊豆山権現の常行堂に祀られていた宝冠阿弥陀如来と四菩薩のうち2菩薩が展示されていて観に行ったことがありますが、その宝冠阿弥陀如来はもとは上常行堂のもの、それとは時代と作風の違う2菩薩の方は快慶作で、現在広島県の耕三寺所蔵の快慶作の宝冠阿弥陀如来と一緒に下常行堂に祀られていたものといいます。いずれにしても、真言密教にも天台密教にも、阿弥陀如来が密教化された尊格が存在するということで、真言宗なのに阿弥陀様のお札を配ることに矛盾はないということみたいです。

また、前記事(前編)でも記したNHK BSプレミアム『新日本風土記』でもその様子が紹介されたように、川崎大師大開帳中の毎朝夕、双盤講(そうばんこう)の方々が唱える双盤引声念仏(そうばんいんじょうねんぶつ)に合わせて御本尊の前にかかる御戸帳(みとちょう)が開帳・閉帳されますが、その念仏も「南無阿弥陀佛」でした。もしかしたら実際は、純粋に紅頗梨色阿弥陀如来などの密教系の阿弥陀信仰だけでなく、浄土系の阿弥陀信仰も入ってきていたのかもしれませんね。もちろんこれは素人の推測にすぎませんが。

 

さて、無事1枚目の赤札がいただけたところで、お昼もすぎたので、境内の屋台で腹ごしらえ。粉もののお好み焼きに昼間からのビールは最高でした! その屋台のお好み焼きは自分で自由にトッピングできたのでいろいろ欲張りすぎて、何の食べものかわからなくなってしまいましたが(笑)

境内の屋台のお好み焼きとビールで腹ごしらえ

境内の屋台のお好み焼きとビールで腹ごしらえ

昼食が済んだら休む暇なく、2枚目の赤札授与を目指して、今度は午後1時の回の護摩の列に並びました。最後尾に1時10分に合流。一回に出せる赤札の数には限りがあるようで(というのも、赤札は貫首が精進潔斎のうえ祈願をこめて一躰ずつを手刷りするといわれているので…)、列が長くなりすぎると締切がかかるのですが、この回の締切は1時22分。ゆっくり食べていたらアウトになるところでした。ただその分待ち時間は少なく、列はすぐに動き出し、再び大本堂で御本尊を拝み、赤札をいただくまで45分ほどしかかかりませんでした。

赤札列の一部には日除けも張られている

赤札列の一部には日除けも張られている

2巡目でいただいた2枚目の赤札

2巡目でいただいた2枚目の赤札

 

2枚目が思いのほか早くいただけたので、ここで境内を少し散策。その前に御本尊と直接結縁するために、供養塔に触れに行きます。

大本堂前に立つ供養塔

大本堂前に立つ供養塔

お寺や宗派によっては回向柱とも呼ばれるものですが、これほど巨大なものは見たことがありません。御本尊のお大師様の手と紐で繋がっており、紐をつかみ供養塔の木肌に触れ、しっかり結縁してきました。また境内にはこんなにエキゾチックなお釈迦様もいらっしゃいます。

降魔成道釈迦如来像

降魔成道釈迦如来像

さて、三たび赤札列へ。今回は午後2時30分の回の護摩の赤札を目指し、ちょうど2時半に列の最後尾につきましたが、結果的には一番長時間並ぶことになりました。2時半の護摩では赤札が出なかったのです。そのため薬師殿前の広場で一歩も動けないまま1時間10分が経過、その次の午後4時の護摩が始まる前の3時40分頃になって、やっと移動が始まりました。

そのまま大本堂のすぐ近くまで進み、そこで中で行われている護摩修行の激しい太鼓の音を聴きながら待ち、護摩が終わった直後の4時半頃入堂、4時50分に3枚目をいただきました。

3巡目でいただいた3枚目の赤札

3巡目でいただいた3枚目の赤札

これでどうにか無事に今回のミッションは終了! 3巡でトータル4時間半ほど並んだことになるのでさすがに疲れましたが、天候的には薄曇りで日差しが弱く、風も吹いてたので、どうしようもない暑さではなかったのは救いでした。ただ、晴れて気温が上がったら大変だと思います。最初に並ぶ薬師殿前の広場には日除けはありません。紫外線対策や熱中症予防の水分補給などはしっかり行う必要があります。

ちなみに3巡目で大本堂に入った時には、もう4時を過ぎていたので御本尊の前の御戸帳が閉まっており、お姿は拝めませんでした。

 

その後は、境内のまだ観ていなかったところをまわりました。なにしろ初めての川崎大師ですから。

2008年に完成したばかりのインド風建築の薬師殿

2008年に完成したばかりのインド風建築の薬師殿

成田山新勝寺本尊のご分躰を勧請し祀った不動堂

成田山新勝寺本尊のご分躰を勧請し祀った不動堂

その足下が四国八十八ヶ所のお砂踏み霊場になっている遍路大師像

その足下が四国八十八ヶ所のお砂踏み霊場になっている遍路大師像

祈りと平和の像(手前)と八角五重塔(奥)

祈りと平和の像(手前)と八角五重塔(奥)

大山門

大山門

 

そうこうしているうちに、境内も門前の仲見世も、先ほどまでの賑やかさが嘘のように人が少なくなり、すっかり静かになっていました。急いで3枚分の赤札入れと、門前の老舗、住吉の名物「久寿餅」(くずもち)を買い、家路につきました。
赤札・赤札入れ・境内で配布していた冊子類・大開帳奉修記念スタンプ

赤札・赤札入れ・境内で配布していた冊子類・大開帳奉修記念スタンプ

川崎大師名物 住吉の久寿餅

川崎大師名物 住吉の久寿餅

最後に余談ですが、やはり長時間並んだ疲労でしょうか、帰りに駅の地下街の階段の最後の一段で足が上がりきらず、つまづいて派手に転んでしまいました。今赤札3枚も持ってるのに?と一瞬思いましたが、よく考えると転び方の割には全くどこも打たず無傷だったのは、赤札の「無量の功徳を授かり、罪障消滅して遍く利益が得られるばかりでなく、一旦危急に面した場合にも、あらたかな霊験の不思議があらわれる」といわれるところの、まさに「危急に面した場合にあらわれるあらたかな霊験」だったに違いないと思ったりするのでした。

また10年後、元気に赤札をいただきに行きたいものです。

[拝観日:2014年5月27日]

 

川崎大師(金剛山 金乗院 平間寺)

【住所】川崎市川崎区大師町4-48

【電話】044-266-3420

【拝観】大開帳奉修:10年に一度の春約1ヶ月間(期間・日程は年による。平成26年は5月1日~5月31日)
〈本尊開帳時間〉6:00~16:00

※通常拝観時間等の記載は特にありませんが、自身拝観日当日は17時にはほとんどのお堂が閉まっていました。

【拝観料】特になし

【アクセス】京浜急行大師線・川崎大師駅下車、徒歩8分。
または、JR川崎駅東口バス乗り場7番より川崎鶴見臨港バス「大師行」(川23系統)に乗車。「大師」バス停下車、徒歩8分。

【川崎大師公式サイト】http://www.kawasakidaishi.com/

【平成26年大開帳奉修公式サイト】http://www.kawasakidaishi.com/daikaicho26/

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