秩父三十四ヶ所めぐりある記《シリーズ・甲午歳総開帳(1)》

第1番・四萬部寺から第5番・語歌堂まで―霊場感あふれる札所とまほろばの巡礼道


秩父札所 午歳総開帳(チラシ)

秩父札所 午歳総開帳(チラシ)

この秋(2014年)の訪仏活動の一環としてやりたかったことの一つが、今年、午歳ということで総開帳が行われている秩父札所の巡礼でした。

もともといわゆる「見仏」から入った私としては、お寺巡りを始めてからも、しばらくは巡礼はおろか御朱印もいただいていなかったのですが、わりと最近になってようやくやってみたいなぁと思うようになりました。御朱印は特に好きな仏様である阿弥陀如来を中心にいただくようになり、巡礼は札所が西日本なのでなかなか進みませんが、法然上人二十五霊場を発願済みです。

まだ一度も巡礼を「結願」したことがないのですが、東京から日帰りで通える歴史ある霊場で、しかも札所が一つの地域にまとまっていてコンパクト、さらにちょうど総開帳の年ということで、なんとか11月18日までの期間中に結願しようと秩父巡礼を思い立ちました。方法としては、より巡礼している実感がありそうということと、時々ハイキングに行ったりなど好きでもあるので、「徒歩」を選択。幸い、ハイキング仲間が一緒にやってみたいと言ってくれて、いよいよ先日スタートしてきました。

今回は、その巡礼1回目―第1番・四萬部寺~第5番・語歌堂までのレポートです(長い記事なのでお時間のある時にどうぞ!)。

 

秩父鉄道 和銅黒谷駅から武甲山をのぞむ

秩父鉄道 和銅黒谷駅から武甲山をのぞむ

スタート地点は秩父鉄道の和銅黒谷駅。池袋7:05発の秩父鉄道直通の西武線なら乗り換えなしで約2時間で着きます。ちなみにここで注意したいのは、秩父鉄道ではPASMO等のICカードが使えないので、西武線から切符を買って乗りましょう(私は思わずカードで入鉄してしまい、後で精算などちょっと手間がかかってしまいました…)。

この日は9月半ばの晴天でしたが、もう残暑というほどでもなく気持ちよく歩けました。畑と民家の間を縫う巡礼道。のどかな里の風景の中を進みます。のんびり歩いて小一時間で第1番札所、四萬部寺に到着。

 

◆第1番 誦経山 四萬部寺(ずきょうさん しまぶじ)

四萬部寺 山門

四萬部寺 山門

ひとたび門をくぐり境内に入ると、霊場らしい濃密な空気が満ちているのがわかります。しかも第1番札所として、発願寺らしい風格も漂います。道では自分たち以外に巡礼者どころかほとんど人を見かけなかったのですが、境内は、バスで巡っている団体やマイカーで来た人など、入れ替わり立ち代りかなりの賑わいです。

参拝する前にまず巡礼用品を購入。まさに形から入るとはこのことですが、今回巡礼するにあたって少し本格的にやってみたいと思っていました。第1番の四萬部寺には巡礼用品がすべて揃っています。

四萬部寺で購入した巡礼用品

四萬部寺で購入した巡礼用品

私が今回購入したのは、左から…輪袈裟(1000円)・総開帳記念のTシャツ(1500円)・納経帳袋(400円)・納経帳(1200円)・経本(300円)・納札(束で100円)。納経帳にはすでに四萬部寺の御朱印が書かれており、日付を入れてもらってさらに御朱印代300円が追加されます。表紙が柄の納経帳は1500円でした。まぁ、自分が輪袈裟なんてするようになるとはちょっと前まではまったく考えられないことでしたが…(笑)

四萬部寺 本堂

四萬部寺 本堂

今回参考にした秩父巡礼本『秩父三十四カ所ウォーキング』(JTBパブリッシング)に載っている参拝の作法にしたがって、いよいよ参拝。手水で清めて鐘をつき、本堂へ。氏名・日付等を記入した納札を所定の箱に納めました。納札も初めての体験。団体さんが退出するのを待って、小ぶりだけど非常に重厚感のある本堂の中へ。合掌の後、これまた法要以外の参拝では初めての読経。ここまではなかなか勝手がわからず、思わず時間もかかりましたし、まだまだ集中してできたとはいえませんでした。

そして御本尊をじっくり拝します。彫刻が施された宮殿的な屋根付きの厨子の中にさらにもう一つの通常の厨子。二重に厨子に入ってらっしゃる小さな立像の聖観音様。他のお寺の御開帳などでは御本尊に照明が当てられていることもよくありますが、そういうこともないので暗く、全身も黒ずんでいるので、お姿の細かいところはほとんどまったくわかりませんでした。でも今回の目的はいつもの「仏像拝観」ではないですし、かえってこれが巡礼というものかなという気もしました。

堂内を見渡すと、けっしてきらびやかなものはありませんが、歴史の中で蓄積された濃厚な祈りをうかがわせるものがあふれ、重厚さと厳かさに圧倒されます。特に明治・大正時代に奉納された繭玉が秩父らしさを感じさせました。内陣の向かって左側には、お前立も含まれるのでしょうか、本尊より大きい3体の観音像がありました。

第1番・四萬部寺の御朱印

第1番・四萬部寺の御朱印

 

◆第2番 大棚山 真福寺(おおたなさん しんぷくじ)

1番・四萬部寺~2番・真福寺の途中の風景

1番・四萬部寺~2番・真福寺の途中の風景

1番~2番の途中の小堂に祀られている如意輪観音の石仏

1番~2番の途中の小堂に祀られている如意輪観音の石仏

2番・真福寺手前まで続く坂道

2番・真福寺手前まで続く坂道

四萬部寺をあとにして、再び巡礼道を次の札所へ向かいます。途中にはきれいな小川が流れていたり、路端の小さなお堂に如意輪観音の石仏が祀られていたり、なんとものどかで味わい深い風景が続きます。道は次第になだらかな坂に。さらに杉の森に入ってもそのまま延々と坂が続きます。そして、「あぁ、やっぱり巡礼って甘くないんだな…」と思いながらようやく坂を登り切ったところに、第2番・真福寺がありました。

真福寺

真福寺

木々に囲まれた小さな境内。無住のためひっそりとしています。御本尊は四萬部寺同様、立像の小さな聖観音様。こちらのお堂は中に入ることはできず、御本尊を外からのぞくようにして拝みます。中は暗く、お姿をはっきり観ることはできません。しかし、こちらの堂内は造りはいくぶんシンプルながらも、祈りを込めた奉納品がたくさん吊り下がり、やはり寄せられる祈りの深さをひしひしと感じます。境内のベンチで一休みしたのですが、涼しくて本当に気持ちよい風が吹いていたのが印象的でした。

真福寺を少し過ぎたところにある古木

真福寺を少し過ぎたところにある古木

真福寺~2番納経所・光明寺への道に沿う渓流

真福寺~2番納経所・光明寺への道に沿う渓流

真福寺からは、今度は違う方向に坂を下っていきます。しばらく行くと渓流に沿ったなだらかな下り坂が続きます。森を抜けて、次の札所に行く前に立ち寄らないといけないのが、真福寺が無住のため第2番の納経所になっている光明寺です。

第2番納経所・光明寺

第2番納経所・光明寺

第2番・真福寺の御朱印

第2番・真福寺の御朱印

 

◆第3番 岩本山 常泉寺(いわもとさん じょうせんじ)

横瀬川の渓流

横瀬川の渓流

常泉寺を手前からのぞむ

常泉寺を手前からのぞむ

遅めの昼食をとって、第3番札所へ。横瀬川の渓流に掛かる橋を渡り、お寺の近くまできた時、そのまわりの風景のあまりの気持ちよさ、のびやかさに、ある意味驚きを感じました。青々とした草むらの向こうの山際にこれから向かう第3番札所の常泉寺。振り返ると、きれいな稜線の山があり青空が広がっています。この場の気持ちよさに、正直、すぐにお寺に入るのがもったいないとさえ感じたほどです。

常泉寺 観音堂

常泉寺 観音堂

観音堂の海老虹梁の彫刻

観音堂の海老虹梁の彫刻

境内に入って正面にあるのは本堂。札所の観音堂は、さらに境内左手奥の石段を登った高い場所にあります。このお堂も小ぶりながら大変重厚かつ立派な建築で、江戸時代後期ものとのこと。特に装飾彫刻がすごい! その中でも一瞬目を疑ってしまうほどの超絶技巧で彫られているのが海老虹梁といわれる部分の龍の彫刻です。「かご彫り」という技法で、熊谷の近くに住んでいた飯田和泉という彫士によるものなのだそうです。

こちらの御本尊も聖観音。外からの拝観ですが、堂内は明るく、お像も比較的大きいので、お姿ははっきり観ることができます。顔や胸など肌の部分は金箔が貼り直されています。ただ、身体は比較的普通の観音様ですが、顔・頭部がなんとなく変わっているように見えます。はっきり見えるといっても細部まではわからないのですが、お顔の印象としては、なんというか若干西洋風というか、私にはどこかマリア像を彷彿とさせるように感じました。でも、観る人によって、あるいは観る時によっても、全然違ったりするのかもしれませんね。

観音堂からの風景

観音堂からの風景

常泉寺はまわりの環境や風景も素晴らしいですが、観音堂を含めた境内も、高低差あり、岩肌ありと起伏に富み、霊場感あふれるいい佇まいのお寺でした。どこを切り取っても絵になります。この日カメラを忘れて、スマホでしか写真が撮れなかったのが悔やまれます。そういえば写真にもあるように、御本尊のお手綱を結んだ観音堂の前の祈願塔に傘をさしてあげているのがなんともお茶目ですが、こういうところも含めて親しみやすくもあり、もっと長くいたかったお寺でした。

第3番・常泉寺の御朱印

第3番・常泉寺の御朱印

 

◆第4番 高谷山 金昌寺(こうこくさん きんしょうじ)

第3番から第4番に向かう途中、道に面した庭先に休憩所を設け、巡礼者にお接待をされているご家庭があったので立ち寄らせていただきました。冷たいお茶とくだものなどをいただきながらご主人のお話をうかがったのですが、本当にいろいろな思いを抱えていろいろな人がやってくる秩父巡礼だから、なにか役に立てることはないかとの思いから関東では少ないお接待を始めたのだそうです。私も御開帳などの折、境内で地元の方が振る舞うお茶やお餅をいただいたことはありますが、こうして四国のお遍路のような形で道すがらのお接待を受けたことはなかったので、とてもありがたい体験でした。

金昌寺 山門

金昌寺 山門

山門の仁王(阿行)

山門の仁王(阿行)

山門の仁王(吽行)

山門の仁王(吽行)

山門楼上の仏像群

山門楼上の仏像群

さて、そうこうしているうちに日も傾き始め、4時になってしまいました。この日は5番までまわれれば次回続きがスムーズに始められるので、札所が閉まる5時までの1時間で、あと2ヶ寺参拝しないといけなくなりました。が、4番・金昌寺の門を見て直感。「このお寺はすごそうだ…」と。

門は写真のとおり立派な楼門。左右に仁王を配し、仁王に奉納された巨大なわらじが掛かっています。仁王さんも赤い肌に青い衣装のコントラストがなかなかかっこいい感じです。しかしもっと驚くべきは楼上の無数の仏像。下からは一つ一つの細かい姿はわからないのですが、お寺で購入した資料によると羅漢の石仏とのこと。山門の楼上に羅漢像があること自体は珍しくありませんが、このように数が多く、しかもサイズもバラバラ。さらによく見ると、どう見ても光背があって宝髻を結った観音や菩薩も混ざっているようなんですよね。

この写真を見ると、もとのひと揃いの羅漢さんたちはそのままに、それ以外の様々な石仏が雑多に配置されているよう見えます。いずれにしてもこういう祀り方は初めて見ました。なんとも不思議な雰囲気です。

境内の石仏

境内の石仏

境内の石仏(十一面観音)

境内の石仏(十一面観音)

境内の無数の石仏

境内の無数の石仏

そして門をくぐって境内に入るとまたびっくり。おびただしい数の石仏ワールド! 境内全域に約1300体もあるそうです。昔は今より境内がずっと広く、3800体あったというからさらに驚きです。とにかく、今まで巡った札所とは異質な、しかもより濃厚な霊場感が充満しています。本来なら、もう少しこの異空間をじっくり味わいたいところですが、今回は時間がありません。順番は逆になりますが念のため先に御朱印をいただいて、御本尊を拝みに行きました。

観音堂

観音堂

慈母観音

慈母観音

慈母観音(拡大)

慈母観音(拡大)

こちらの観音堂もまた趣があります。御本尊は十一面観音。やはり外からの拝観になり、堂内も暗いのではっきりした表情はわかりませんが、見た感じ像高1メートルほどの立像で、天衣や身体のラインに優美さが感じられる十一面観音らしいシルエットでした。

観音堂の軒下には2体の石仏があります。一つは奪衣婆、そしてもう一つが写真の慈母観音です。

この慈母観音、寛政四(1792)年に江戸の商人が寄進したもの。まるで西洋の彫刻、マリアとキリストの母子像を思わせ、一般の仏像のイメージとはかなり違いますが、当時の浮世絵師の原画によるものだとか。一節には隠れキリシタンの像ともいわれているようですが確証はないそうです。いずれにしても、もはや説明不要の素晴らしい母と子の像ですよね。通称「子そだての観音様」。私の妹も今年子どもが生まれたばかりで、今まさにこの状態。思わず子の成長と母子の健康を願わずにはいられませんでした。

第4番・金昌寺の御朱印

第4番・金昌寺の御朱印

 

◆第5番 小川山 語歌寺(おがわさん ごかのどう

語歌堂

語歌堂

山門の仁王(阿形)

山門の仁王(阿形)

山門の仁王(吽形)

山門の仁王(吽形)

山門越しの観音堂

山門越しの観音堂

見どころたくさんの金昌寺を後ろ髪を引かれる思いであとにし、今回の最終目的地、第5番札所の語歌堂を目指します。しかし、いよいよ時間がない。疲れを忘れて早足で巡礼道を南下します。札所で配っている地図だと近そうに見えるのですが、焦る身には案外遠く感じました。

10分か15分ほど歩いてようやく語歌堂到着。住宅の間にちょっと唐突に建っています。派手だけど愛嬌がある仁王さんがいる山門と観音堂だけの簡素な境内。まわりに木々も囲いもない小さな境内ですが、一歩足を踏み入れると不思議と霊場の空気に変わったような気がしました。御本尊は小さな坐像の准胝観音。5番目の札所にして初めての多臂の観音様です。

やや焦りながらの読経でしっかり読めていなかったのが悔やまれますが、こちらの参拝後にもう1ヶ所、5時までに行かないといけないところがあります。語歌堂も無住のため、近所とはいえ納経所が別のお寺なのです。

第5番納経所・長興寺

第5番納経所・長興寺

総開帳期間中、参拝者にプレゼントされる「散華シール」

総開帳期間中、参拝者にプレゼントされる「散華シール」

語歌堂から徒歩数分で、納経所の長興寺に到着。5時まで10分切ってしまっていましたが、なんとか第5番の御朱印がいただけました。実は写真のように、各札所では「散華シール」がもらえるのですが、御朱印を待っている間、ふと「これどうすればいいんだろう?」と思った時に納経所で台紙(500円)を売っていることに気づきました。せっかくなので、最後の札所まで34枚集め、台紙に貼って部屋に飾ろうと思います。

IMG_0762_02

 

こうして秩父巡礼初日は、どうにか目標の5番まで巡ることができました。長興寺を出るとすぐ間近に武甲山が見えています。この記事最初の和銅黒谷駅からの写真を覚えているでしょうか。そこで遠くに見えていたのと同じ山です。ここで初めて、今日はずいぶん歩いたんだなと実感しました。帰りの最寄り駅は、さらに歩いて30分ほど南にある西武線の横瀬。駅に着いて同行者がスマホのアプリで測ったところによると、境内でウロウロした分も含めてですが、総歩行距離はなんと18キロを超えていました…

でも、本当にすばらしい風景と、積み重ねられた祈りが作り上げた趣ある札所、そしておもてなしの心にあふれた秩父の人々に触れて、ほとんど楽しいばかりで疲れは感じませんでした。秩父はハイキングで山には何度も登っていますが、こうして里の巡礼道を歩いてみて、今回初めて秩父の本当のよさに少し気づけたような気がします。秩父は自然と文化が豊かな素晴らしい土地。まさに「まほろば」でした。

次回は横瀬駅からスタート。第6番・卜雲寺から始めます。

長興寺・語歌堂付近からの武甲山

長興寺・語歌堂付近からの武甲山

[訪仏日:2014年9月13日]

 

<参考サイト>

秩父三十四観音霊場 秩父札所連合会

【公式サイト】http://www.chichibufudasho.com/

<参考文献>

『秩父三十四カ所ウォーキング』(大人の遠足BOOK) JTBパブリッシング 2013年

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