増上寺 黒本尊阿弥陀如来[東京]

家康が戦場に伴った勝運の霊験仏

【御開帳】1月・5月・9月の各15日


2ヶ月ほど前(2014年7月)、静岡市の宝台院に徳川家康ゆかりの「白本尊」と呼ばれる阿弥陀如来像を拝観に行きましたが、今回は東京・芝、浄土宗大本山の増上寺で「黒本尊」と呼ばれる、やはり家康と非常に縁が深い阿弥陀像を拝観してきました。

増上寺 三解脱門(三門)

増上寺 三解脱門(三門)

黒本尊御開帳の案内

黒本尊御開帳の案内

安国殿

安国殿

正五九祈願会の案内

正五九祈願会の案内

黒本尊は秘仏。1月15日・5月15日・9月15日の年3回御開帳されます。併せて、その正月・五月・九月を表す「正五九(しょうごく)祈願会」という法要も行われます。御開帳自体は10時~16時ですが、14時から行われる正五九祈願会の終了後だけは内陣に上がってより近くで拝ませていただけます。実は2、3年前にも一度黒本尊を拝観しているのですが、その時の経験から14:30頃到着すると法要も終盤を迎えており、最後に浄土宗の法要につきものの十遍のお念仏を皆で唱えて、大体14:40頃法要終了。すると参列者・参拝者が靴を脱いで内陣に上がり始め、黒本尊の厨子の前に列を作り、順番に拝んでいきます。

黒本尊が祀られているのは大殿(本堂)ではなく、横の安国殿という法然上人八百年御忌を記念して2011年に建立されたばかりの真新しいお堂です。中も広く明るいですが、黒本尊がよく見えるかというとそうではありません。内陣の須弥壇上には黒本尊を収める黒漆と金の金具がピカピカに輝く、やはり新しく立派な厨子がありますが、その扉はわずかしか開いていません。もちろん中に照明があるわけではなく、黒本尊もまさに名前のとおり全身が真っ黒なので、実はほとんどシルエットしか見えません。でも確かにそこにいらっしゃる。存在ははっきり確認できるのです。

この絶妙な開扉のしかたで、見えそうでよく見えない、でも存在を「感じる」ことはできるというのが、この黒本尊の御開帳の一番の特徴かもしれません。私のように最初「見仏」、つまり仏像を「見る」ことから入った者にとってはある意味厳しい仕打ちといえるのですが、不思議なもので、数年前に最初に拝んだ時よりも「これでいいじゃないか」という納得度合いは高まったような気がします。それは自分自身が、仏像の姿形を見て楽しむだけでなく、信仰とまではまだいえないかもしれませんが、その中でも特に阿弥陀如来という存在になぜか惹かれ始めたこと、また多少なりとも各地でさまざまな仏像の祀られ方や神仏あり方を垣間見るようになったことも関係しているかもしれません。つまり、目に見える「形」だけが仏像のすべてではないという、ある意味当たり前のことにようやく実感がともなってきたということでしょうか。

黒本尊のこの全身の黒さについて、寺伝を要約すると…

恵心僧都の作と伝えられる御丈二尺六寸の立像は、その昔金箔燦然と輝く金色の御躰であったが、長年の香煙によって黒ずみ、また、人生の悪事災難を我が身が一身に受けとどめ、人々の諸々の厄難を救い、明るい幸福な人生の請来を願う一大誓願の現れである。黒本尊の名は、家康公の命名といわれている…

黒さこそがこの阿弥陀仏のアイデンティティであり霊験の象徴だとすると、その黒さをますます黒く感じさせるこの御開帳のしかたは、信仰する者にとってはありがたさをより実感することにつながります。そういう意味では、この「よく見えない」見せ方こそが、この阿弥陀様の最適な見せ方といえるのかもしれませんね。

また、この阿弥陀像は「勝運黒本尊」と、特に「勝運」が強調されます。かつて徳川家康の念持仏であり、戦場にも伴って戦勝を祈願し、家康の数々のピンチを救い、最後には天下を獲らせて将軍にまでしたのだから、確かに勝運については日本最強の仏様ともいえそうです。

ところで、年3回の御開帳はいずれも「15日」。Twitterでフォロワーさんが言っていましたが、拝観したこの日はちょうど関ヶ原の戦いがあった9月15日でした。旧暦の9月15日は、現在の暦に直すと実は10月21日だったそうですが、もしかしたら天下を獲った日付の「15」を吉数として縁日にしているのかもしれませんね…(推測であり、真偽は調べていませんが)。

さて、話を当日の拝観に戻します。よく見えないし、今まで述べたように特に見ることが目的ではない仏像といっても、見える範囲で、あるいは見えないながらも観想してその姿を少しでも具体的に思い浮かべるためにも、一応最大限見ようとはしてみました。

普段は厨子の前に立ち、このような御開帳の時には厨子の横に移動している「御前立」の阿弥陀立像は二尺ほどで小ぶりですが、黒本尊はいわゆる三尺阿弥陀。シルエット的には比較的頭が小さく体部も細め。全体的によりスリムで洗練された印象の安阿弥様の阿弥陀立像だと思われます。列に並びながら目を凝らして見ていると、拝礼の番の頃には少し目も慣れて、腹部・脚部の流麗な衣文や快慶風のすっきりした胸の張りもうっすらと見えてきます。

後ほど列がはけて、迷惑がかからないように改めて単眼鏡で見てみましたが、結局かろうじて目鼻の位置だけが確認できる程度。目鼻立ちや表情はまったくわかりませんでした。それを踏まえてどんなお顔か想像してみると、やはり快慶好きの私としては、快慶仏のようにキリッとした目で理知的な顔立ちで、一見クールそうに見えて、瞳の奥には深い慈悲を湛えているような阿弥陀様であってほしいなぁと思うのですが、これはただ自分の「タイプ」を言ってる感じになってしまいますね(笑)。でも本当の顔がわからない分、想像で好きな顔を当てはめて、人それぞれ思い思いに祈ればいいのかななんて思ったりもしました。

御本尊の御朱印(右)と黒本尊の御朱印(左)

御本尊の御朱印(右)と黒本尊の御朱印(左)

安国殿は、増上寺のお守り・お札等の授与、祈願等の受付の窓口も兼ねていて、御朱印もこちらでいただけます。増上寺には、秋の文化財公開、別時念仏会、聲明と雅楽の鑑賞会などで年に何度か行くのですが、実は大殿の御本尊の阿弥陀様のものも併せて今回初めて御朱印をいただきました。写真右が大殿安置で増上寺全体の御本尊の「阿弥陀如来」、左が今回御開帳だった「黒本尊」の御朱印です。なお、実は黒本尊の御朱印は「裏メニュー」で公式には案内されていませんが、希望すればいつでもいただけるようです。

大殿内陣

大殿内陣

安国殿を出て、大殿へ。昭和49年完成の鉄筋造りの巨大なお堂ですが、広くて静かな堂内、モダンな内陣空間の先には上品な輝きを放つ御本尊の室町期の阿弥陀様がいらっしゃって、落ち着いて一休みするのにいい場所です。毎月24日の夜行われる別時念仏会では、この堂内を真っ暗にして阿弥陀様だけが浮かび上がる中で、参加者一同ポクポクと木魚を叩きながら念仏三昧をします。

増上寺の境内は、都民の憩いの場として、よくイベントや大道芸が開かれていますが、この日行われていたのは猿まわしでした。

境内で行われていた猿まわし

境内で行われていた猿まわし

[訪仏日:2014年9月15日]

 

三縁山 広度院 増上寺(さんえんざん こうどいん ぞうじょうじ)

【住所】東京都港区芝公園4-7-35

【電話】03-3432-1431

【拝観】秘仏 黒本尊阿弥陀如来 御開帳:1/15・5/15・9/15の10:00~16:00
※内陣での拝観は14:00開始の正五九祈願会終了後のみ

【拝観料】無料

【アクセス】
JR線・東京モノレール 浜松町駅から徒歩10分
都営地下鉄三田線 御成門駅から徒歩3分、芝公園から徒歩3分
都営地下鉄浅草線・大江戸線 大門駅から徒歩5分
都営地下鉄大江戸線 赤羽橋駅から徒歩7分
東京メトロ日比谷線 神谷町駅から徒歩10分

【公式サイト】http://www.zojoji.or.jp/

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