訪仏なう。* 3歩

速報・山形訪仏の旅


筆者の「訪仏」活動や当ブログの近況・速報をお知らせするシリーズ、「訪仏なう。」…約2か月ぶりの今回は、先週、世界中がブラジル・ワールドカップで盛り上がる中行ってきました初めての山形旅について。

今回山形に行く一番の理由は、なんといっても、平成4(1992)年以来22年ぶり、今世紀は初となる寒河江市・慈恩寺の御開帳です。もちろん慈恩寺に限らず、自分にとってはほぼ未知の領域であった「みちのくの仏像」の一端に触れる絶好の機会にもなりました。

今回の行程は…

【1日目:6月24日】 吉祥院→極楽寺→慈光明院→圓應寺

【2日目6月25日】 長念寺(長岡観音)→慈恩寺→立石寺(山寺)

の計7か寺。山形といってもとても広いわけですが、いつものごとく公共交通を利用しての旅なので、今回は山形市と寒河江市のみをコンパクトに巡ってきました。でも、十分中身の濃い、思い出深い旅になりました。

以下、Twitterの方で当日ご覧いただいた方には重複した内容になるかもしれませんが、簡単にダイジェストで振り返ってみます。

 

【1日目6月24日】

◆吉祥院

千手堂(左上)・びっしり貼られた納め札(左下)・本尊の千手観音(右。お寺の冊子より)

千手堂(左上)・びっしり貼られた納め札(左下)・本尊の千手観音(右。お寺の冊子より)

本堂裏の奥之院(収蔵庫)に収まる宮殿(厨子)の中に本尊像が3体、千手観音立像を中央に、脇の伝薬師・伝阿弥陀(いずれも姿は菩薩形)が向かい合うように立っています。三尊で千手観音とされ、「出羽一佛」と呼ばれてきた山形県を代表する仏像です。平安初期~中期制作と考えられ、いずれも非常に量感があります。また、それぞれ表情や体型に特徴があり、実に個性的で味わい深い姿をしています。宮殿の前には、伝勢至・伝吉祥天・毘沙門天・子安観音と呼ばれる像の、さらに4体の平安古仏が立ち並び、伝勢至菩薩は眉間にも目があり亀に乗っているので、実は水天ではないかといわれています。

また、吉祥院は最上三十三観音の第3番「千手堂」として、おびただしい数が貼られた納め札や堂内に掛けられた和裁講の絵馬など、地域の篤い信仰がひしひしと感じられました。ご住職もとても気さくで楽しく話をさせていただけたので、よい旅のスタートが切れました。

※奥之院拝観は念のため事前連絡をおすすめします

極楽寺

阿弥陀如来坐像(上・左下)・本堂(下中央)・本堂本尊の阿弥陀三尊立像(右下)

阿弥陀如来坐像(上・左下)・本堂(下中央)・本堂本尊の阿弥陀三尊立像(右下)

山形市街に入って、六日町の極楽寺へ。元は播磨の赤松家のものだったという鎌倉前期の阿弥陀如来坐像を拝観。運慶の工房作とも伝わる慶派の美仏で、モダンな間接照明に浮かび上がるおしゃれな安置のされ方もその美しさを引き立てています。慶派の中でもかなり巧みと思える美しい衣文も素晴らしかったです。

ちなみにこの鎌倉慶派阿弥陀像は明治になって末寺から迎えた客仏。表の本堂に、本尊の来迎形の阿弥陀三尊が祀られていますが、こちらは江戸時代に東京芝の増上寺から迎えられたという話が伝わっているのだそうです。

※拝観は要予約

慈光明院

阿弥陀如来坐像(左)・阿弥陀三尊(右上)・銅造薬師如来立像(右下)

阿弥陀如来坐像(左)・阿弥陀三尊(右上)・銅造薬師如来立像(右下)

山形市街のさらに中心に近い七日町の慈光明院。仏壇屋さんが敷地内で運営し、明治時代に縁あって慈恩寺から迎えらた鎌倉時代の阿弥陀三尊をお祀りしています。中尊の阿弥陀坐像は、両手人差し指と親指で輪を作り胸前に構える、珍しい中品上生の説法印を結んでいます。実際拝すと、写真よりもどっしりしていて厚みがあり、厳しめな表情と相まって実に堂々とした阿弥陀さんです。また、こちらも縁あって神仏分離の時に鶴岡の薬師神社から迎え、その御神体であった銅造薬師像もいらっしゃいました。こちらも文化財に指定されています。

また、慈恩寺から阿弥陀三尊をお迎えするにあたり、当時の店主は得度授戒して僧侶の資格も取ったのだとか。以来、代々ご家族によって大切にお守りされている様子がお話からもお堂の雰囲気からもとてもよくわかりました。

※拝観は要予約

圓應寺

圓應寺観音(左上・右上)・観音堂(左下)・境内の弘法大師の石像(右下)

圓應寺観音(左上・右上)・観音堂(左下)・境内の弘法大師の石像(右下)

山形市街をまた少し北に戻った宮町の圓應寺。観音堂には、丈六の聖観音で東北最大級の木造観音坐像という最上三十三観音第4番の圓應寺観音がどーんと鎮座されていました。ただし本尊はその胎内仏で三十三年に一度の御開帳とのこと。

 

【2日目6月25日】

この日は早朝、ホテルの部屋でワールドカップ、日本×コロンビア戦の中継を観てからのスタートでした。

長念寺(長岡観音)

観音堂(上)・本堂の不動明王坐像(左下)・両界大日如来坐像(右下)

観音堂(上)・本堂の不動明王坐像(左下)・両界大日如来坐像(右下)

最上三十三観音第16番、寒河江の長岡観音長念寺は、現在、秘仏十一面観音の御開帳中(2014年5月17日~9月17日)。観音堂の正面に鳥居があり、神仏習合の名残を感じさせます。

こちらのお寺には、御本尊の他にも多くの仏像をお祀りしていて、しかも秘仏の本尊以外は写真撮影が許されています。本堂には不動明王坐像、そして一つの厨子一つの台座(蓮台は別)を共有し金剛界・胎蔵界の大日如来が並んで座っている両界大日如来という珍しい仏像も。

五智如来(上)・五智如来のうちの阿閦如来(左下)・観音堂内にびっしり貼られた納め札(下中央)・巡礼者や参拝者へのお接待のさくらんぼ(右下)

五智如来(上)・五智如来のうちの阿閦如来(左下)・観音堂内にびっしり貼られた納め札(下中央)・巡礼者や参拝者へのお接待のさくらんぼ(右下)

観音堂の壁際には、五体揃った五智如来坐像が並んでおり、そのうちの阿閦如来は、出羽の国十三仏第11番阿閦如来霊場の本尊。最上三十三観音の納め札が、ここでは堂内にびっしり貼られていて濃厚な霊場感がありました。また、巡礼者・参拝者がつまめるよう山形名物さくらんぼが皿に盛られているなど、おもてなしの心遣いが嬉しいお寺でもありました。

慈恩寺

御開帳中の本尊弥勒菩薩坐像と菩薩坐像(左。お寺の冊子より)・本堂(中央)・三重塔(右)

御開帳中の本尊弥勒菩薩坐像と菩薩坐像(左。お寺の冊子より)・本堂(中央)・三重塔(右)

本尊の弥勒菩薩をはじめとする秘仏御開帳中(2014年6月1日~7月21日)の本堂、巧みな造形が決まりまくりの慶派十二神将がズラリ並ぶ薬師堂、初層の本尊大日如来御開帳中の三重塔の3か所を拝観。普段の拝観料は500円ですが、この御開帳中は800円です。

東北随一の仏像の宝庫といえる慈恩寺ですが、あまたの仏像の中で個人的に一番惹かれたのは、ひざまずく小さな菩薩像でした。両腕を失いながらも救おうとする姿。慈悲に満ちたまなざし。救う悦びにほのかに笑みさえ浮かべているように見えます。菩薩の究極を見た思いがしました。

立石寺(山寺)

山門から山上の五大堂や奥之院へ向かう間の風景(左)・根本中堂(右上)・姥堂(右中央)・弥陀洞(右下)

山門から山上の五大堂や奥之院へ向かう間の風景(左)・根本中堂(右上)・姥堂(右中央)・弥陀洞(右下)

そして山形の旅最後の目的地は、有名な山寺こと立石寺。根本中堂の、去年が50年に一度の御開帳だった本尊薬師如来の厨子は固く閉ざされていましたが、不滅の法灯に照らされて厨子の黒漆が光り、板間の床がピカピカに磨き上げられた内陣はまさに聖なる空間の厳かさで、背筋が伸びる思いがしました。

五大堂や奥之院を目指し山門をくぐると、そこはまさに山の霊場。岩と巨木の世界に立ち並ぶ石塔や石碑の数々。奪衣婆を祀る姥堂の屋根には草が生え、風雨が岩肌を侵食し丈六の阿弥陀の姿を浮かび上がらせたという弥陀洞も奇っ怪です。

そして最後にたどり着いた五大堂からの眺めと吹き抜ける風は、旅の最後にふさわしく、素晴らしいものでした。

崖の上に建つ納経堂(左)・五大堂(右上)・五大堂からの眺め(右下)

崖の上に建つ納経堂(左)・五大堂(右上)・五大堂からの眺め(右下)

 

また、山形はお寺や仏像だけでなく、風景や郷土料理も素晴らしかったのはいうまでもありません。

慈恩寺から山寺へ向かう途中のJR左沢線車窓から眺め(左上)・山寺門前 美登屋「板そば」(右上)・香味庵まるはち「芋煮」(左下)・酒蔵 澤正宗「だしかけ豆腐」(右下)

慈恩寺から山寺へ向かう途中のJR左沢線車窓から眺め(左上)・山寺門前 美登屋「板そば」(右上)・香味庵まるはち「芋煮」(左下)・酒蔵 澤正宗「だしかけ豆腐」(右下)

 

以上、それぞれのお寺とその仏像については、また改めて、さらに詳しく記事にしていきたいと思います。写真もほかにもたくさん撮ってきましたので。

そしてこの記事の最後は、山形から夜行の高速バスで東京に帰ってきて、まだ旅の余韻の中マクドナルドで朝食をとりながらつぶやいた以下のツイートで締めようと思います。

山形旅。最初は慈恩寺と山寺だけで1日だけでもいいかななんて考えてたけど、2日間にして最上三十三観音のお寺や街の中の普通のお寺にも行ってみて本当によかった。むしろそういうところこそ山形らしさが味わえた。

山形らしさとはつまり「人」だった。気さくで親しみやすく、おもてなしの気持ちにあふれた方々のおかげでいい思いができた。仏像だけでなく本当にいいところだなぁと思った。今まで東北にはほとんど行ってなくて遠いと思い込んでたけど山形はそうでもなくて、ぐっとハードルが下がった。また行きたい。

[訪仏日:2014年6月24日~25日]

 

<参考>

最上三十三観音

【公式サイト】http://www.mogami33.com/

最上三十三観音は通常、子年が合同御開帳ですが(前回は2008年)、中間年に当たる今年、慈恩寺の御開帳などとともに山形デスティネーションキャンペーンにも呼応し、「午歳ご縁年“観音まつり”」を開催。その一環として、上記の長岡観音を含めた7札所で御開帳が予定されています。

「山形DC、きょうスタート 9月13日まで」(山形新聞 2014年6月14日)

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